7.全国精労協の闘い

1.春闘

 全国精労協の活動の柱の一つは春闘です。全国精労協に参加するほとんどの組合で共同行動を組み、助け合い、励ましあって、労働条件の改善をめざしてきました。

 春闘は、長引く経済不況や、国の医療費抑制制作等により病院の経営が危ぶまれる事態になっています。これまでの国政のまずさのつけを国民及び我々医療労働者に押し付けるかのようです。その中で経営者は、医療の質をすみに追いやり、経営の安定の名のもとに、賃上げストップ、賃金体系の変更、最低人員での労働、身分保証の低いパート労働者の大量導入、外注化等様々な形での人件費削減とそれに伴う労働条件の劣悪化が行われています。医療の質を維持し高めるのに必要なマンパワーを発揮することが困難な状況です。

 昔のように右肩上がりの経済成長は望めず、労働組合離れも進んでいる今、全国的に春闘の取り組み方事態が問われています。労働者に対する風当たりが確実に強くなっているからこそ、生活賃金の確保、労働条件の改善のために、全国の労働者仲間と連帯した闘いが必要です。各労働組合により事情は異なりますが、全国精労協では「安心して働きつづけられる職場」の確保のため、情報を交換し合い、互いに支援しあいながら春闘に臨んでいます。         

 全国精労協では、ブロックごとの春闘プロジェクト会議、4月に情報交換の「春闘交流集会」、7月には「春闘総括集会」を行っています。

2.医療の点検と改善をめざす諸活動

 精神疾患を有していても、地域で差別されず安心して暮らせることをめざして、精神医療及び福祉は遅々とした歩みではあれ、日々変わってきています。

 労働組合がこの流れに鈍感であっていいはずはありません。

 困難が伴う課題であり、全社会的な問題です。個別の病院だけで解決できる問題ではありません。しかし、それぞれの病院では、日々努力が重ねられ、地域に開かれた病院もたくさんあります。こうした努力には、組合も協力しており、日常活動の点検のなかで、医療の改善をめざす活動が続けられています。隔離収容的な病院では、患者さんの人権が守られておらず、法の範囲外におかれ、虐待されているケースもあります。こうした病院には、まず間違いなく組合が存在していません。組合の存在そのものが、閉ざされた病院に歯止めをかけているのです。

 全国精労協は労働条件と医療の改善をめざす活動として、次に掲げる二つの大きな行事を主催しています。  

[精神医療研究懇談会]

 毎年夏、全国精労協主催で、「精神医療研究懇談会」が開かれています。この研究懇談会は、91年までは、京都精労協の主催でおこなわれていましたが、内容が全国性を帯びているため、全国精労協発足時に、京都精労協の好意により引き継がれました。

 精神医療研究懇談会は「精神医療及び福祉の現場で、今何が起こっているのか」「労働者の権利と医療の向上のために我々は何をすればいいのか」を議論する場であり、課題に向けて現場で提起して働いて行くための扉となる場でもあります。

[厚生省(厚生労働省)交渉]

 全国精労協では結成以来、重要な活動の一つとして、働く者の立場から精神医療・福祉制作や労働条件の改善、精神障害者の人権擁護などの課題について、毎年100人規模で厚生労働省との交渉を行っています。

 私達の労働条件や医療の中身は、医療法や精神保健福祉法、厚生省が打ち出す様々な施策に左右されています。一方で厚生労働省は現場の状況をほとんど知りません。私達の職場での努力が、国の政策や法の壁に阻まれ、思うように実を結ばない現実があります。日々の労働を、さらに誇りの持てる充実したものに変えて行くためにも、現場からの直接の声で訴えて行く必要があります。

 交渉開始以来、撤廃を要求し続けている中の「精神科特例」は精神障害者に対する差別行政の象徴であり、精神科医療の改善を阻害している元凶でもあります。精神障害者が差別されているということは、現場で働く私たちも差別されているということなのです。今後も断固撤廃を要求し続けます。 

 これまでの厚生省交渉では、精神科特例の撤廃の他に、閉鎖病棟への公衆電話未設置の改善、あいも変わらず発生する精神病院不祥事問題など、精神障害者の人権擁護の問題、長期入院者の退院促進、規制緩和・病院の食事の外注化反対や、私達の労働条件そのものを規定する、労働契約法制問題などを交渉議題としてきました。

 これらの議題で、労働組合として厚生労働省交渉を行っているのは、唯一、全国精労協だけです。      

3.権利は譲らない、解雇は許さない。

 労働争議はおおむね、経営者側が、組合の要求にたいして不誠実な態度を崩さないときとか、はじめから、組合を攻撃し、あわよくば組合をつぶしてしまおうとして、権利侵害を続けるときに起こります。

 この権利侵害にたいして闘う組合に対して、全国精労協は全力で支援します。「権利は譲らない、解雇は許さない」は私達の闘いの原点であり、合言葉です。いくつかのしんどい局面もありましたが、全国精労協が支援した組合の闘いは、ストライキを構えたり、労働委員会や裁判所に提訴したりして、勝利的に終結しています。

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