5.精神科医療労働者をとりまく労働環境

 医療労働者は、歴史的に、劣悪な労働条件を甘受してきました。夜勤等を含めて、労働の内容の厳しさとはうらはらに、賃金は低く抑えられてきました。世間相場と比べても、はるかに低いのです。

 多分この低賃金構造は、医療経営者の無理解や、女性が圧倒的に多い職場で、男女差別の差別賃金の世間の風潮をもろにうけたものと考えられます。同時に、労働組合の数が少なく、影響力が小さいために、労働条件の改善がなかなか進まないこともあります。更に精神科医療現場は、精神障害者差別の社会的反映として、精神科医療労働が低く見られている結果としての労働条件の相対的劣化があると言えるかもしれません。

 全国精労協結成から18年経過した今日、労働環境も大きく変わりました。日経連などの財界と政府の構造改革という方針の下で、正規雇用労働者に代わり、非正規雇用労働者が1/3を超える状況が生み出されました。ケアワーカーの非正規雇用化と給食委託が医療職場に大きく広がっています。労働者総体の年収は下がる一方です。そして、労働基準法などの労働法制が改悪され、今や8時間労働制の規制を撤廃しようという財界と政府による新たな攻撃が起こってきています。こうした状況は「労働組合とは何か」という、私たちの原点を改めて問う時代となっていることを教えています。労働組合結成前と結成後は、労働条件に大きな違いが生まれます。そして労働組合が原則に立って闘う時、自分の職場だけでなく、他の病院職場にも大きな影響を与えます。こうして全国精労協加盟の各組合では、加盟する前に比較し、労働条件の大幅な改善が勝ち取られているのです。

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