4.変貌する精神科医療に組合はどう対抗するか

 精神科医療をとりまく状況はたいへん厳しくなっています。慢性的な人員不足の現場で働く皆さんには肌で感じられることでしょう。

 日本の精神科医療は「隔離収容」政策が長年続いています。その結果、グラフに見られるように、世界に例を見ない病床数と、長期入院による膨大な社会的入院を抱えています。国内外の批判を浴びて、厚生労働省は2004年、「10年で7万2千人の社会的入院を解消する」と発表しました。しかし、本来必要な地域の受け皿の充実はされていません。逆に「障害者自立支援法」によって障害者の負担は大きくなったために、他院促進‐地域生活はいっそう難しくなります。

 日本政府の社会保障を切り捨てる新自由主義政策のため、医療費が削減され、福祉予算が抑制されています。では、各病院の経営者は、この状況にきちんとした対応ができているのでしょうか?残念ながら、NOといわざるを得ません。右往左往しているのが現状です。そのしわ寄せは、患者さんと精神科医療現場で働く労働者に押しつけられています。この結果、賃金が抑制され、非正規雇用が拡大し、調理部門などの委託が進んでいるのです。

 そこで労働組合が、労働者の生活や権利を守るために必要になてきます。労働組合が社会に開かれており、情報や闘い方を熟知していれば、経営者を追及することも、経営者に方針を提示することもできます。

 また、厚生労働省の政策の誤りに根本原因があるので、国に精神科医療福祉政策をあらためさせる運動が必要です。

 安心してかかれる精神科医療と誇りを持って働くことができる現場作りの課題は、現場の労働組合だからこそ取り組むことができるのです。

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